2017年5月11日

「矢中の杜」へようこそ 邸宅のお宝(かも)4

邸宅のガイドだともうラストスパートとなる、別館の階段を上る。
総ケヤキ造りの漆仕上げと紹介すれば、皆さんその造りや登り易さに感心される。
登ったところは左右対称の小さなホールになっているのだが、正面に掲げてある書にはあまり興味を持たれない。
だいたい達筆すぎて、何と書いてあるのか読めないというのが本音かもしれないが。
どうやら『仏説無量寿経』の一節らしく、 履信修善『信を履み善を修す』とでも読むのであろうか。

矢中龍次郎氏は時宗であったらしく、これは達筆とうたわれた遊行七十世他阿一求上人の書のようである。
一求上人は滅多なことでは書を下されなかったと、私の菩提寺の僧侶が教えてく ……

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2017年4月6日

「矢中の杜へようこそ」 邸宅のお宝(かも)3

表玄関に入り、まずはそこで屋敷の豪華さに驚かれると思う。
だが目ざとい方は玄関ホールの隅に置かれた、この楽器に目がいくようである。
オルガン?子供用のピアノ?などと聞かれるが、コンパクトながらもきちんとしたカワイ楽器製のピアノなのだ。

あまりにもコンパクトにできていて、譜面台が前屋根の中に収納されている。
株式会社河合楽器製作所さんに問い合わせたところ、昭和23年に戦後初めて製造されたNo.101というモデルらしい。
空襲で会社工場が全焼してしまったので、詳細な資料は残っていないらしいが。

同社の資料館には同型のピアノが残っており、以下その説明書きを引用させていただ ……

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2017年3月9日

「矢中の杜へようこそ」 邸宅のお宝(かも)2

邸宅の空き地にシートが被せられた車があることに気づかれた方も多いと思う。
実はこれは、矢中家で実際に使われていた車なんだそうである。
残念ながら保存のために公開はしていないが、なかなか素敵な車なのだ。

手前の車はドイツのオペル社で作られた、オリンピアというモデルらしい。
1950年代初めの頃のものようで、比較的手頃な輸入車として人気だったそうだ。
丸みを帯びた形状は、いかにもかつてのドイツ車という感じがする。

奥にある車はT型フォードと思われるが、右ハンドルである。
詳しいことはよくわからないが、イギリス・フォード社製ではないかと思われる。
フロントにクランクが ……

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2017年2月12日

「矢中の杜へようこそ」 邸宅のお宝(かも?)1

これほど豪華な邸宅を建てた龍次郎氏であるから、どこかに金銀財宝が残しているのではないかとは誰もが思う夢であろう。だが残念ながらそんなものは、今の所見当たりはしない。もちろん屋敷や調度自体が、十分お宝なのではあるが。しかし悲しいかな凡人たる我々は、即物的な財宝を夢見てしまうのである。
だが実は価値のあるものがそこに残っていても、それに気付かないだけなのかもしれない。価値を知る人が見れば驚愕のものが、もしかしたらゴロゴロ転がっているかも。これってもしかしてというものを、ご紹介してみたいと思う。知識のある方がご覧になったなら、何かコメントを頂けたら嬉しい限りである。

まずは掛け軸に仕立てられ ……

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2017年1月29日

「矢中の杜へようこそ」 邸宅の換気の工夫

40年も空き家だった邸宅がこれほど良い状態で残ったのは、一つには矢中龍次郎氏がこだわった換気の工夫があるようだ。
例えば表玄関のホールに隣接する物置の床には床下部屋への通気口 が作られている。

 

そして多くのガラス戸の腰板部分が無双窓となっていて、空気の通りを調整出来るようになっている。
夏には冷たい空気を、ここから取り入れているのであろう。
ところでこの無双窓は作られて75年も経とうというのに、まだちゃんと稼動するのも驚きである。

そして熱い空気は天井に作られた換気口から、天井裏に排出される。
照明が取り付けられている天井が一段高くなっていて、周囲の格子の部分 ……

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2017年1月15日

「矢中の杜へようこそ」 ドラマのロケに使われた

このシリーズも今日から再開です。今年もよろしくお願いします。
さて今回は、いつもとはちょっと毛色の違った話です。
ご紹介していたように昨年の12月26日に、”矢中の杜”でロケの行われたドラマが放映されました。満島ひかりさん主演の「シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語」の第一話「何者」です。ご覧になった方は、あのシーンはここで撮影されたのだなどと、振り返ってみるのも楽しいかと思います。
まずは結城少将の誕生祝いのシーンは、板戸絵を見ればすぐにわかると思いますが別館一階の食堂です。基本的にはソファーを変えたくらいで、レイアウトは変わっていません。

そして事件が起きた書斎は、まさに ……

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2016年12月18日

「矢中の杜へようこそ」謎の切り欠き

屋外は基本的にガイドの対象外となっているので、お気づきになった方は少ないと思うが、本館西側の屋根に不思議な切り欠きがある。
場所は書斎の明かり取りの窓の上であるので、初めは光を取り入れるための工夫かと思ったが、位置が微妙にずれている。
そういえば以前、そこに生えていた樹を避けて建てられたと聞いた気がする。
地面を探すと、確かに古い木の根がまだ残っていた。
ならばと古い写真を調べてみたら、確かに建物のすぐ脇に大きな樹が写っている。
この樹を残すために、わざわざあんな複雑な構造を選んだということか。
普通ならば伐り倒さないまでも、建物にかかる部分を切り落とすと思うのだが。
書斎の明か ……

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2016年12月4日

「矢中の杜へようこそ」 玄関ホールのピアノ

”矢中の杜”の見学ツアーは、通常本館の表玄関ホールでの説明から始まる。
矢中龍次郎氏の事や屋敷の由来・そして邸宅の豪華さや工夫を解説しまずは座敷を案内するのだが、目ざとい方はホールの隅のこのピアノに興味を持たれる。
たった51鍵しかないこのピアノは、オルガンや子供用に思われてしまうのだが。

これは河合楽器が戦後最初に製作を再開した、モデルNo.101というピアノである。
昭和20年に空襲で工場が全焼した河合楽器の当時の社長はピアノ製造技術が途絶えるのを憂いて、昭和23年にはあえてピアノの製造を再開したのだそうである。
とはいえ当時は生活物資すら不足する時代であったので、このような ……

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2016年11月21日

「矢中の杜へようこそ」 昭和の生活用品

”矢中の杜”には、昭和の懐かしい生活用品が数多く残っている。
若い人には珍しく、ご年配の方には懐かしくご覧になっているようである。
ちょっと台所を覗いてみても、こんな最初期型の「電気炊飯器」が残っている。
まだご飯を炊くだけの機能しかなく、保温すらしてくれないが、画期的な製品だった。

またパン食が一般化すると、トースターも広まっていった。
もちろんパン焼き専門で、焼きあがるとポップアップする。
今ではオーブントースターに、駆逐されてしまった感もあるが。

お湯を備蓄するのには、この魔法瓶が使われていた。
中が真空になったガラス瓶が使われており、倒したり落としたりすると割れ ……

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2016年11月7日

矢中の杜へようこそ こんなこだわりが

旧矢中邸は傾斜地の中腹に建てられているため、玄関までには石段を登る構造になっている。
石段は幅の広い大谷石が使われていて、なかなか豪華である。
そして表玄関への石段は、途中で少し曲がるようになっているのがお分かりだろう。
側桁は大谷石の上に御影石が載せられているのだが、その折れ曲がった部分の石が「く」の字に曲がっているのにお気付きであろうか。
普通に考えれば二つの石を斜めに交差させるのであろうが、あえて一つの石で作られている。
切れ目のない折れ曲りは目立たないのであるが、その存在がこの石段を柔らかく見せている気がする。
当然反対側もそうであるが、こちらは下の大谷石の継ぎ目が見えるの ……

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