旧矢中邸のこと

IMGP2126筑波山麓の南、つくば市北条地区に建つ旧矢中邸は、建材研究者である矢中龍次郎氏によって、昭和13(1938)年から28(1953)年まで、約15年をかけて建設されました。約770坪の広大な敷地内に本館(居住棟)、別館(迎賓棟)などの建造物が現存し、その周囲には庭園が広がっています。
建築の背景には、龍次郎氏の「永年の研究、発明成果を適用し、木造のモデル住宅を作る」という想いと、「皇族が休息できる迎賓空間を設える」という意図がありました。そのため旧矢中邸は、伝統的な和風建築をベースとした上で、龍次郎氏の研究成果が反映された独特の構造や材料が取り入れられています。内部には、近代の上流階級において流行した和洋折衷様式を採用し、格式の高く、豪華絢爛な意匠が随所に見られます。
邸宅内には当時の調度品が多数残っており、旧矢中邸は昭和の生活空間を体現する貴重な文化遺産です。平成23(2011)年に国登録有形文化財に登録されました。

“矢中の杜”ができるまで

IMGP21352

矢中氏は昭和40(1965)年に亡くなるまでを完成した邸宅で過ごしましたが、矢中氏の死後数年経つと家族も邸宅を離れ、以後約40年間にわたって邸宅は空き家状態となってしまいます。
平成20(2008)年、矢中家から現所有者である森氏に所有が移ると、邸宅にも転機が訪れました。空き家状態が長く邸宅・庭園とも荒れ放題になっていましたが、のちにNPOを構成するメンバーも加わり、少しずつ掃除をし、公開できる状態にしていきました。邸宅・敷地を合わせた空間を新旧の所有者にちなんで“矢中の杜”と名付け、旧矢中邸は地域の文化遺産として、再スタートを切ることになりました。