つくば市北条地区に位置する旧矢中邸は北条出身の建材研究者・矢中龍次郎が昭和初期に建設した近代和風住宅です。その規模の大きさや内部意匠の豪華さなどから、建設当時より地域住民には通称「矢中御殿」として知られていました。邸宅内には当時の家財道具なども多数残されており、建築だけでなく民俗史の視点からも貴重な文化遺産といえます。しかし、数十年間空き家状態で放置されたため、建物、庭園ともに損傷が深刻化しており、早急な保存対策を要する状態でした。
そのような中、平成20(2008)年に邸宅の所有者が変わったのを契機に、所有者や筑波大学の学生を中心にして当邸宅の保存活用の活動が始まりました。平成22(2010)年6月にはNPO法人を設立し、邸宅や庭園の掃除、邸宅の公開、邸宅を活用したイベントの企画などを行っています。文化遺産である旧矢中邸を保存活用し、“矢中の杜”として再生する活動を通して、「場所づくり、人づくり、まちづくり」の実践に取り組んでいます。