2017.02.23

龍次郎さんのことその22ー龍次郎さん、邸宅を案内する。

昭和13年から28年にかけて建てられた矢中の杜は、近代を生きた龍次郎さんの思想や好みの集大成なのだろうと思っています。単に、趣味や好みだけではなく、龍次郎さんが考える「建築とはどうあるべきか」という問いの答えを具体的かつ実験的に示している、そういった意味でも見応えのある邸宅です。

 

矢中の杜の建設当時の龍次郎さんの取材記事によると、
「必ずしも私物とせず学会の研究的会合などには喜んで提供する用意があると言っており、将来は財団法人として公共のように供する時期もあろうかと言っている。」
(建築設備 No.33 昭和28年7月1日発行 ※旧仮名遣いは現代仮名遣いに筆者が適宜修正した)
邸宅の使い方に関する記事は他にもあって、龍次郎さんご自身が、後々は博物館や資料館として一般に公開すべきというご希望があったようです。

龍次郎さんご自身がお住まいになっておられた頃から、見学者も多くおられたようで、学生向けの見学会なども開催されたのだそう。現在の邸宅公開に来られた方の中には、当時龍次郎さんに案内してもらった思い出があるという方もおられ、うらやましい限りです。矢中の杜でも展示している「建築設備 No.34 昭和28年8月1日発行」には、アメリカ陸軍将校の3組のご夫妻訪問の様子が掲載されていて、華やかな様子がわかります。

矢中の杜は、国登録有形文化財であり、近代和風住宅としてカテゴライズされています。法規上の規制や、材料や技術の有無、生活習慣、暮らし方の変化、など様々な理由で、現在では同じものを建てることは極めてむずかしく、できないと言っても過言ではない。

「今ではもうつくれないもの」という一面を持った矢中の杜をどのように保存していくかは、十分配慮するべきところでありますが、だからといって使うこと以上に邸宅の魅力や価値を知る方法はないとも思うのです。

当時から積極的に行われていた見学会は、今後の研究に役立てるためといったお堅い目的だけでなく、邸宅自慢という面もたっぷりあってことだったのだろうと思えて、「龍次郎さん、やっぱり魅力的な方だなあ」とつい笑顔になってしまうのでした。

次の公開日は、2月25日(土)です。
雛飾りとともに、お待ちしています。
4月1日(土)には北条の文化財巡りも開催予定。どうぞお楽しみに。

ナカムラ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です