2016.07.31

龍次郎さんのこと その9ー龍次郎さんとマノール

龍次郎さんは日露戦争から帰還した後、明治38年、満28歳の時に満州に渡りました。そこで建材の輸入を行いながら、国産建材を作るべく、満州の主要な作物である大豆を原料として研究、セメント防水剤を発明しました。龍次郎さんが発明したセメント防水剤「マノール」。いったいどのようなものなのか。

マノールの原料は大豆です。大豆からセメント防水剤って???と、ピンとこない方もおられるのではないでしょうか。

大豆製品は数々あれど、すぐに思い浮かぶのは味噌、醤油、納豆、油など食物としての利用です。しかし、大豆油は化学原料の一部としても捉えられており、いくつかの機能を持った高分子化合物です。総括して油脂化学と称されていて、化学産業の大きな分野を占めているのです。龍次郎さんが日本でおこした会社「油脂化工社」の名前の由来でもありましょう。

IMG_0357大豆油から加工された脂肪酸アルミニウム。これがマノールの主成分です。
それまであったセメント防水剤は、防水性を持った物質そのものをセメントに混ぜ込むものだったので、現場でそれを混ぜ込み、均一な性能を発揮させるのは、難しかったのだそう。
そこで龍次郎さんの登場です。

龍次郎さんのマノールはその主成分脂肪酸アルミニウムと、セメントの加水分解による可溶性塩類との化学反応で、防水性物質”オレイン酸アルミニウム石灰”を生成させるという製品。セメント粒子を包み込んで、凝固乾燥と同時に水分を跳ね返し、防水作用を発揮する物質です。

つまり、マノールをセメントに混ぜ込むと自然と化学反応が起こり、防水性のある物質が発生、均一な防水性を持つ防水コンクリートが出来上がる。なるほどこれなら施工性もぐっと増したことでありましょう。

マノールは漢字にすると「万能児」、満州での読み方がマノールなのだそう。漢字を見ると龍次郎さんの自信や思いが伝わってくるような気がします。

IMG_0377朝鮮人参の「矢中龍虎堂」といい、「万能児」といい、龍次郎さんのネーミングはダイレクトで人をワクワクさせるなあ、と思いつつ、自分には難しい化学用語がいまひとつ理解できないことも忘れ、研究に励む白衣姿の龍次郎さんを妄想するのでした。

次回の公開は、8月6日(土)です。
翌週13日(土)はお盆休みをいただきます。
今年の夏休み、ご家族で、矢中の杜での昭和の暮らしを垣間見てみてください。

ナカムラ

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