旧矢中邸は傾斜地の中腹に建てられているため、玄関までには石段を登る構造になっている。
石段は幅の広い大谷石が使われていて、なかなか豪華である。
そして表玄関への石段は、途中で少し曲がるようになっているのがお分かりだろう。
側桁は大谷石の上に御影石が載せられているのだが、その折れ曲がった部分の石が「く」の字に曲がっているのにお気付きであろうか。
普通に考えれば二つの石を斜めに交差させるのであろうが、あえて一つの石で作られている。
切れ目のない折れ曲りは目立たないのであるが、その存在がこの石段を柔らかく見せている気がする。
当然反対側もそうであるが、こちらは下の大谷石の継ぎ目が見えるので、一層その構造がよくわかる。
ほとんどの方が気付きもしない部分であるが、玄関に入る前にすでに見事なこだわりを見せてくれているのである。
soraneko