2021.12.02

“矢中の杜”をはじめた守り人の話 11 “呼ばれた”人 Hさん

こんにちは。井上です。

今回の記事タイトル、“呼ばれた”人。

は?っと思われるかもしれませんね~。

矢中の杜の活動を始めて、これまで続けてきた中で、まさにこの人は、邸宅に、あるいは施主である矢中龍次郎さんに、このタイミングで“呼ばれた”んだろうなと思わずにいられない方々がいます。

私自身も、邸宅との出逢いは本当に不思議な縁によるものだったので、自分は邸宅に呼ばれたんだな、と当時しみじみ思っていました。

別にスピリチュアルな話ではないのですが、それまで接点や繋がりはなかったのに、なぜか今その時に必要だ!というタイミングで、人と繋がることがあるのです。

今回はNPO設立時のメンバーを決める際に、「この人も邸宅に“呼ばれた”のかも」と感じた方のことを少し紹介したいと思います。

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【NPO法人を目指す】

4人会から始まった矢中の杜の活動ですが、今後の運営主体を検討するにあたり、早い段階からNPO法人を立ち上げるという案は挙がっていました。

手元に残る資料を見返すと、私が現オーナーと出会って3か月しか経っていない2009年2月の4人会の打ち合わせの時点で、すでにその話が出ています。

NPO法人がいいとした理由は、

・邸宅の規模を考えると、維持管理していくには大きな資金が必要になることは確実で、とても個人の手に負えるものではない。資金運営や、補助金や助成金への積極的応募などを視野に入れると、法人格があった方がいいのでは

・元々空き家で近寄りがたい建物な上、地元住民以外の人間が出入りしている状況は、地域の人にとっては不信感や不安を抱くことになるかもしれない。得体のしれない任意団体ではなく法人格のある団体である方が、周りからも信用してもらいやすいのでは

といったことがありました。

ただ、資金もないため、コンサルタントや行政書士のような専門家などに依頼もせず、NPO設立までに至る過程をすべて自分たちで進めていました。

NPOを設立するにあたっては、法人認証や登記の手続き上、少なくとも10名のメンバーが必要になります。

当然、4人会の4人をまず含むとして、残りの顔ぶれをどうするか?

とっても重要で、悩ましい案件です。

「地元の方々じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は、発起人のメンバーにはほとんど地元の方は含まれていません。

それには、すでに北条地区の地域団体として先に立ち上がっている「北条街づくり振興会」とのバランスを考えたという面があります。

地域づくりに関心があり、パワーのある方々は振興会で活躍されていて、その力をこちらに分散させるのは忍びないという思いや、せっかく新しくNPO法人を立ち上げるのであれば、これまでの北条地域で築かれていた人脈とはまた違う人脈を広げて、新たな動きになるといいなという思いもありました。

そんな思惑もありつつ、それまでの掃除や調査を進めてきた中で、今後も力になってもらいたい方に声をかけて、まず決まったのが、文化財建造物に詳しい建築専門の研究員、大学院生、大学を卒業後つくばで就職した元学生仲間でした。

そして、地域の事情もよく把握し、さらに北条地区以外の地域とも様々なつながりを持っておられる方2名も快諾してくだいました。

そして残る1名が、冒頭に書いた、邸宅に“呼ばれた”(と私が勝手に思っている)方、デザイナーのHさんです。

【Hさんとの出逢い】

Hさんは、デザイナーとしてのキャリアを持った社会人で、その経歴を生かしつつ筑波大学の大学院に入ってきた方でした。

そんなHさんとの出逢いは、ちょうど私たちがNPO設立の検討をしている真っ只中のこと。

Hさんから、早川さんと私に北条での活動について話を聞きたいとの申し入れがあったのがきっかけでした。

Hさんは某有名商品のデザインなども数々手がけてこられたような方ですが、その一方で、とある地域の活性化にまつわるデザインに携わる経験をしたことで、地域づくりにおけるデザインに関して、もっと深く掘り下げるべく大学院に入ったそうで、その一事例として、早川さんと私が学生として北条地区で関わってきた活動について話を聞きたいと思われたようです。

早速Hさん、早川さん、私の3人で会うことになり、一通りHさんからの質問に答えていったわけですが、私の記憶としては、なんといっても、Hさんの第一印象がとても良い!のです。

私たちより年齢は上で、バリバリのキャリアを持ったデザイナーということですから、果たして私たち学生の話なんぞどれほど興味を持ってもらえるのだろうか、と内心思っていたのに、いざ会ってみると、とにかく物腰が柔らかく、表情や話し方すべてから相手(この場合は私たち)への敬意が感じられるのです。相手の話や言葉を否定することは絶対になく、「ああ、この方はきっとどんな人との会話でもおもしろいと感じられる人なんだな」と思うような、そんな雰囲気を持った方でした。

初対面とは思えぬ打ち解けた空気になって、私たちからもHさんのこれまでの経歴やデザインについていろいろと話を聞くことができたのですが、このHさんの話すデザインの視点、手法が、NPO法人設立に向けて悩んでいる私たちの心に、グサッと刺さったのです。

NPO法人を立ち上げて矢中の杜を舞台に実現したいことは、メンバーそれぞれの頭に浮かぶものがあっても、それをどう整理して、共有して、一つの法人の事業計画としてまとめていけばいいのか。

社会人経験もなく、もちろん法人設立経験もない学生の私たちには、どうしても力不足な面がありました。

論文やレポートを書くのとはまた違った話ですものね。

(自分たちにはできるという自信だけはありましたが…笑。若いっていいですねぇ)

そこに来て、このHさんとの出逢いがあったわけです。

デザインというと、どうしても出来上がったアウトプットのものを想像してしまいますが、そこに至るまでのプロセスをどう組み立てていくか、これがすごく重要で、とても楽しい部分であることをHさんの話から知り、目から鱗が落ちるような気持でした。

この人には矢中の杜の活動に、ぜひ関わってもらいたい!!!!!

この人の経験や視点、デザインの手法は私たちのやろうとしていることに絶対にプラスになってくれる!と、私は内心大興奮(おそらく早川さんも同じ心地だったのでは)。

それまで全く縁がなく、矢中の杜にすら訪れたことがなかったHさんを、すぐさま勧誘して、その力を貸してほしいとお願いしたのでした。

Hさんも快諾してくれて、以後、NPO法人設立に至るプロセスに、デザインという新たな刺激が、Hさんによって加わることになったのです。

Hさんとの出逢いがなければ、矢中の杜の事業方針も違った表現になっていたかもしれませんし、今存在する矢中の杜ロゴマークもリーフレットも生まれなかったことでしょう。

Hさんもきっと、邸宅に、龍次郎さんに呼ばれたんだと私は思っています。

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