2022.03.03

“矢中の杜”をはじめた守り人の話 13 NPO法人、誕生

こんにちは。井上です。

今回の投稿で、ついに、NPO法人“矢中の杜”の守り人が誕生します。

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前回の記事で、矢中の杜のVision、Mission、Valueがまとまりました。

しかし、これはスタート地点であって、NPO法人の設立に向けて決めねばならないことは山積みですし、NPO法人認証申請のための多数の行政書類も揃えていく必要があります。

そのため、中心となる学生メンバーは少なくとも週1回は集まって、話し合いを重ねていました。

写真は、当時の黒板。

NPO認証申請書類にも含まれる事業計画書を作成することを目標に、柱となる事業をまとめている時の記録です。

大学の研究室の一室をお借りして、夜な夜なあーだこーだ言っていたことを覚えています。

Vision、Mission、Valueを念頭にしつつ、矢中の杜で具体的にやりたいことを列挙していった後、それをまとめて最終的には主軸となる4つの事業が決まりました。

歴史的建造物(旧矢中邸)の保存・活用事業

…言わずもがな、活動の根幹である邸宅の保存活用のための事業です。邸宅公開、修繕や掃除、活用イベント、貸しスペースなど。この事業を行うために、私たちはNPO設立を目指しているわけですね。

地域の文化資源に関わる調査・研究事業

…邸宅単体だけでなく、邸宅が建つ北条という地域の文化への視点も忘れたくないという思いが、この事業を掲げる背景にありました。また、さらに視野を広げて、他地域の視察や研修、勉強会の実施などもこの事業の一環で行いたいと考えていました。

普及啓発事業

…矢中の杜のこと、NPO法人の活動のことをより多くの人に知ってもらうために行う事業で、HPやリーフレットの作成、講座の実施などを想定していました。

地域活性化協力事業

…NPO主体ではない地域イベントへの協力や、地域団体との連携のための事業。すでに北条地区で立ち上がっていた「北条街づくり振興会」の存在も大きかったです。

実際にはまだほとんど始まっていない活動を基に考えたこれらの4つの事業ですが、これがなかなか、よくまとまっているものだな、と今書きながら、改めて思います。

今でも変わらずこの4つの事業がNPOの柱となっているのですから。

事業計画書をはじめ、定款、収支予算書、設立趣意書、役員名簿、etc……

所定の書類を揃えるのに四苦八苦する日々を送っていた私たちですが、中でも意外と難航したのが「法人名」でした。

 

 

【法人名:“矢中の杜”の守り人】に決まるまで

当時の創設メンバーによる話し合いの議事録をなぞるのが面白いと思いますので、少々長くなりますが、読んでみてください。

はじめに叩き台として提示された法人名の案は7つ。

 案1.矢中の杜

 案2.「矢中の杜」工房

 案3.「矢中の杜」俱楽部

 案4.「矢中の杜」コミュニティ

 案5.「矢中の杜」を活かす会

 案6.「矢中の杜」活用保存会

 案7.矢中御殿工房

さぁ、ここから喧々諤々の議論が始まります。

 

*****

 

―「矢中の杜」はいじらない方がよい。また「矢中御殿」とすると「建物だけなのか」という印象。保存活用という観点からは5・6が無難。2・3などは副題がほしい。

―名前が今後の活動に関わってくる。5・6だけだと建物だけ? 今後活動広げる時に名前変えるのか? って話になる。

―「保存」というワード。「『矢中の杜』保存会」だと思ったが。そうすると5? 保存がないから6?

―いずれにせよ「矢中の杜」の部分の説明は必要だが、我々の信念を説明すれば良い話なので。

―2の「工房」案を推していこう、と思っていたが、一般的な「工房」の意味に取られてしまうリスクを考えるとシンプルに行った方が良いか、とも思う。

―「ひとまち工房」的な。

―個人的には「工房」に憧れある。

―英語で「アトリエ」?

―「工房」の原義から言うと芸術家が作品をつくる場所、というニュアンス。

―「工房」ははずそう

 

―「倶楽部」は?

―社交場? 「人が集う場所」

―なんかイメージと違う

―ネットで「倶楽部」と検索して出るのが一般的な「倶楽部」のイメージ

―「倶楽部」の前に動詞的なものがないとおかしい?

―そんなことはない

―満たしているが、ありきたり…

 

―団体趣旨として、歴史的建造物保存活用事業だけでなく地域活性化協力事業を含んでいる、ということを込めておきたい

―「文化」というキーワード

―5・6は固い

―2はちょっと変

―4は無い

―3に傾いてる?

―1は説明としてちょっと不親切

―でもおそらく略称で「矢中の杜」と呼ばれることになる。

―だとしたら1?

 

ここであるメンバーから新案が!

 

―「『矢中の杜」の守人』は? NPOの活動趣旨として、矢中の杜を守る人、という意味を名前に込めて。矢中の杜を活用して「盛り」上げる意味での守人でもあります。

―「~守人たち」とか。会員でなくても来てくれたお客さんみんな守人、とか。

―challengingな名前!

―理念にはかなっているが…

―守人の後に「たち」入れると、ファンシー過ぎてなんだかニヤニヤしちゃう(笑)

―シンポジウムとかで自己紹介する時に自分が笑いそう…

―語呂的にはいいんだけど。「のもりのもり」の後何か入れたいし、言いにくいし。

―わざと呼びにくい名前にするのはGoodかも。

―どうせ「守人たち」と呼ばれる

―とにかくキャッチーだよね

 

―細かいところどうするか

―「矢中の杜」の守人

―「矢中の杜」の守人たち

―「矢中の杜」と守人

―「守人」? 「守り人」?

―カッコがやだ?

―“”にする? “矢中の杜”の守人、とか。

―法人名は人を指すから場所を入れるとおかしなことに…?

―カッコは必要。どこで切れるかわからなくなる

―「たち」をつけると、抽象的な法人名が一気に具体的になってしまう。なんか違う?

―相手をニヤニヤさせて自分たちもニヤニヤする、っていうのは名前を付ける側としても本意だし、案外いいのでは?(笑) 「矢中の杜」よりも「守人たち」が先行するのは本意ではないが…

―今この場で決めるのはナンセンスだし、絞っておけばよいのでは

―「り」の有無くらいは決めても。

―こだわる? 別に? →こだわる

―「り」は入れよう。「まもりびと」とか読まれても微妙だし。

第一案 「矢中の杜」の守り人

第二案 「矢中の杜」の守り人たち

第三案 「矢中の杜」倶楽部(一応残しておく)

 

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ようやく「守り人」が前面に出てきました。

当時の議論中の写真も残っていたので掲載します。

いやぁ、悩んでいますね~。

「NPO法人 “矢中の杜”の守り人」という法人名に決まるまで、こんなプロセスがあったのです。

 

「守り人」。

当時の話し合いの中では、私個人はこの表現について、正直なところあまりピンと来ていませんでした。

 

でも。

この法人名とともに活動を続けてくる中で、「守り人」という表現は、とても大切で、なくてはならないものに感じるようになりました。

矢中の杜に関わるいろいろ人を、やんわりと包み込んでくれるような、壁を作らず親しみを感じられるような、そんな柔らかな表現だなぁ、と。

 

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さて、こうして法人名も決まり、なんとか行政書類も提出して、法人登記を経て、

2010年6月10日に「NPO法人“矢中の杜”の守り人」が成立となりました。

思い返してみても、怒涛の道のりではありましたが、まずは第一関門突破というところですね。

連載執筆者としても、とりあえずNPO法人が誕生するまでを書けた、と胸を撫でおろしています。

それでは、今回はこの辺で。

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