2025.04.03

龍次郎さんのこと その36 龍次郎さんと千年住宅

「千年保つ住宅」

矢中の杜をご紹介する際に、表現するキーワードの一つです。
これが最近、守り人の間で、話題になっています。

というもの、重要文化財に指定されたことを機に、矢中の杜について、もう一度考えてみる機会が多々あり、この千年という途方もない時間を、矢中の杜を守っていく一つの目標にしたいと思っているからです。本当に「千年保」たせよう、とはなかなかに難しい目標であり、挑みがいのある目標ともいえましょう。

千年について考えていると、「龍次郎さんはどう捉えていたのか」が疑問にあがります。

龍次郎さんがおっしゃる「千年」は、
・数値としての1,000ではなく、永い期間を示す言葉なのではないか。
・あくまで比喩的な表現なのでは。
・いやいや本当に文字通りの「千年」のことだ
と解釈もひとそれぞれ。

いずれにしても、木造住宅のモデルとなるという気概で、気候風土を考慮し工夫を重ねて作り上げたこの邸宅の機能に、自信を持っていらしたのです。

残っている当時の記事などには、千年の文字が多く掲載されています。

一部を抜粋してみると…

■建築設備第33号 ー社団法人建築設備綜合協会 昭和28年7月1日発行
タイトル『千年以上保つ日本家屋 知識と技術の結晶矢中氏邸』

「日本家屋の欠点は、建築上の不注意無知識によって、千年も保ちうる木材をして、数年で腐朽腐食せしめるところにある。
…中略…
(旧矢中邸は)一見してさしたる特色も見られぬ日本家屋であるが、仔細に見るとその用意の万全たるに驚くものがある。なるほど日本家屋もく迄粋を蒐むれば千年以上保つ国宝的建築であると考られるのである。」

■建築設備第34号
ー社団法人建築設備綜合協会 昭和28年8月1日発行
タイトル『米陸軍将校を招待して 千年保つ矢中氏邸鑑賞会』

■建築設備第122号 ー社団法人建築設備綜合協会 昭和35年12月1日発行
タイトル『千年保つ矢中氏邸訪問記』

「(旧矢中邸は)何しろ日本固有の木造で、千年以上保つという建築である。施工期間の長いのも無理はない。我が国には法隆寺を始め、古い木造建築が、相当数残っている。千年の寿命は必ずしも夢ではない。」

■日刊建設工業新聞 昭和27年8月6日
タイトル『銷夏放談 木造も永久的 今の建築は問題にならん』

「木造建築でもその土地の気候風土に適した建て方さえすれば耐用年数は永久的だよ。今の住宅建築など全然問題にならん。三十年もすれば腐れるようにできている。これは消費経済の立場から言っても国家的な一大損失だよ。」

いかがです?
ご自身の工夫の積み重ね、その自信の揺るぎなさが伝わってきます。
龍次郎ファンの筆者としては、「龍次郎さんは本当に千年を目指していたのだ。百年でなくもっと上の数値目標として持っておられたに違いない。」と、考えていますが、が真相はどこにあるのでしょうか。

今回改めて資料を読み直してみたら、
千年どころか、「千年以上」、「永久的」というもう一つ永い期間が掲載されていて、さすがは矢中龍次郎よ、と惚れ惚れし、ファン冥利に尽きるのでした。

*上述の記事引用()内は筆者による補足です。

ナカムラ

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