龍次郎さんのことーその25 龍次郎さんのタイル

矢中の杜を訪れた方が、邸宅に入って一番最初に目に入るのが、玄関の床にみっしりと貼られたタイルでしょう。布地を押し付けたような模様の入った「布目タイル」。ニュアンスのある柔らかな風合いが目を引きます。
サンプルとしておいてあるタイルの裏をめくると、「泰の字を3つの円が囲むマーク」が付いていて、泰山タイルだということがわかります。泰山タイルは池田泰山氏による泰山製陶所で始まり、建築用装飾品として生産されました。その品格で高い評価を受けていたのだそう。

龍次郎さんと何の関係が?と思っているあなた。これからです。

「泰山タイル」のことを調べてくれた守り人仲間の資料を見て、ふむふむと思い、その出典(日本のタイル工業史 1991年刊)をあたったところ、別ページの「復興建築資料展覧会」の項に「油脂工社(原文ママ)」の文字が。

「復興建築資料展覧会」は龍次郎さんが委員をなさった関東大震災後の展覧会で、のちの「建築資料協会」立ち上げの契機となったもの。はてなと思いつつ、かつ若干興奮つつ、よくよく確認したところ、「矢中龍次郎」の名が記載されておりました!

その資料によると、龍次郎さんは、タイル部門でも出展されていたのです。
その名も「矢中式萬年タイル」と名付けられたタイル。
どのようなタイルだったのかまでは知ることができませんが、当時「万年」はコンクリート製のものを指す言葉だったのだそう。万年塀や万年橋など、聞いたことがある方も多いはずです。

とすると、コンクリート製のタイルということかもしれません。龍次郎さんの業績を調べた他の資料では、「矢中式萬年タイル」の名前は見つかっていませんので、詳しいことがわからないのが残念です。
かしその後、矢中の杜の外壁にも施工された「矢中防火板」が生まれてくるわけで、「矢中防火板」に続いていく系譜ではなかろうか、などと考えてしまいます。

龍次郎さんの既成の枠を超えた発想力には、いつも驚かされてしまいます。「矢中式萬年タイル」という命名にも龍次郎さんらしさのようなものが感じられ、またしてもニヤリとさせられつつ、まったく面白い方だなあと、ますます魅了を感じるのでした。

次の公開は5月27日(土)です。
矢中の杜で新緑を堪能してください。

*「油脂工社」は「油脂化工社」のミスプリントと思われます。

ナカムラ

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