Author Archives: soraneko

2016.12.04

「矢中の杜へようこそ」 玄関ホールのピアノ

”矢中の杜”の見学ツアーは、通常本館の表玄関ホールでの説明から始まる。
矢中龍次郎氏の事や屋敷の由来・そして邸宅の豪華さや工夫を解説しまずは座敷を案内するのだが、目ざとい方はホールの隅のこのピアノに興味を持たれる。
たった51鍵しかないこのピアノは、オルガンや子供用に思われてしまうのだが。

これは河合楽器が戦後最初に製作を再開した、モデルNo.101というピアノである。
昭和20年に空襲で工場が全焼した河合楽器の当時の社長はピアノ製造技術が途絶えるのを憂いて、昭和23年にはあえてピアノの製造を再開したのだそうである。
とはいえ当時は生活物資すら不足する時代であったので、このような[……]

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2016.11.21

「矢中の杜へようこそ」 昭和の生活用品

”矢中の杜”には、昭和の懐かしい生活用品が数多く残っている。
若い人には珍しく、ご年配の方には懐かしくご覧になっているようである。
ちょっと台所を覗いてみても、こんな最初期型の「電気炊飯器」が残っている。
まだご飯を炊くだけの機能しかなく、保温すらしてくれないが、画期的な製品だった。

またパン食が一般化すると、トースターも広まっていった。
もちろんパン焼き専門で、焼きあがるとポップアップする。
今ではオーブントースターに、駆逐されてしまった感もあるが。

お湯を備蓄するのには、この魔法瓶が使われていた。
中が真空になったガラス瓶が使われており、倒したり落としたりすると割れ[……]

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2016.11.07

矢中の杜へようこそ こんなこだわりが

旧矢中邸は傾斜地の中腹に建てられているため、玄関までには石段を登る構造になっている。
石段は幅の広い大谷石が使われていて、なかなか豪華である。
そして表玄関への石段は、途中で少し曲がるようになっているのがお分かりだろう。
側桁は大谷石の上に御影石が載せられているのだが、その折れ曲がった部分の石が「く」の字に曲がっているのにお気付きであろうか。
普通に考えれば二つの石を斜めに交差させるのであろうが、あえて一つの石で作られている。
切れ目のない折れ曲りは目立たないのであるが、その存在がこの石段を柔らかく見せている気がする。
当然反対側もそうであるが、こちらは下の大谷石の継ぎ目が見えるの[……]

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2016.10.23

「矢中の杜へようこそ」 食堂の鳥たち

多くの方々が楽しみにされている「龍次郎さんのこと」の回であるが、投稿者のマシントラブルのため今回は急遽お休みとなる。
繰り上げてこの連載となるが、どうぞご理解願いたい。

今は「野沢如洋展」を行っているが,やはり屋敷を飾るのは南部春邦の画であろう。
特に別館の食堂の板戸絵は、ほとんどの方が驚かれる華やかさの「草木図」であるが、華やかな草木に混じり小鳥が五羽描かれているのである。
玄関ホールの丹頂図をはじめ、書斎の板襖には秋の七草の中に鶉が描かれている。
群鳥図の額装も残っているし、南部春邦は鳥のモチーフが好きであったのだろうか。

soraneko[……]

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2016.10.17

「矢中の杜へようこそ」それでは足元を見てみようか

屋敷には今では信じられないような、豪華な素材がふんだんに使われている。
まず表玄関を入ると、玄関ホールの床は見事な欅の一枚板が敷かれている。
漆仕上げだというそれは、七十余年を経ているというのにまだ輝きを残す。
細かいところを見ればさすがにズレとかも見えるが、未だに見事と言っていいのでは。
続く長い廊下もそれと比べれば地味に見えるが、欅の一枚板の漆仕上げである。
さすがにこちらは日常に使われていたので、漆はだいぶ薄くなってはいるが・・・。
敷地の地形などにもよるのだろうが、南北に延びた廊下の西側に水回りが並んでいる。
この長い廊下と木枠のガラス窓は、なんとも昭和の雰囲気を色濃く残[……]

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2016.10.03

「矢中の杜へようこそ」照明器具の多様さ

矢中の杜(旧矢中邸)には、当時のものと思われる照明器具が多く残っている。
それらの多くはオーダーメイドの特注品なのではないかと思われる。
繊細な磨りガラスと、竹や木・洋銀や真鍮を組み合わせた工芸品の様なものである。
案内しないとあまり気づかれないのだが、なかなか素敵な意匠である。
だがいかんせん薄いガラスを使った繊細なものは、すでに限界かも知れない。
ひとつまたひとつと、次々に保存に回さざるをえないのは仕方がないことだろう。

次回の公開日は、10月8日です。
筑波山麓秋祭りに伴うイベントも、いよいよ始まります。
こちらをご覧ください。

soraneko[……]

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2016.09.18

筑波山麓秋祭り2016

”矢中の杜”も、今年も筑波山麓秋祭りに参加いたします。
まずは11月3日の文化の日に、紋切りワークショップの開催です。
「寿ぐ(ことほぐ)春を迎えるしたく」と題しめでたづくしのお正月向けの紋切り遊びは、切り紙研究家の下中菜穂さんを講師としてお招きしての楽しいワークショップとなります。
邸宅見学・昼食・茶菓子付き、材料代込みで3000円。
ご希望の方は、メールかお電話でご予約ください。
そして今回は屋敷所有の掛け軸等の中で、野沢如洋の作品を展示する予定です。
その独特な水墨画は当時から高い評価を得ていたのですが、官展をよしとせず独自性を貫いた絵師だったようです。
その画は皇族方がお[……]

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2016.09.18

矢中の杜へようこそ 光と影の美しさ

矢中の杜の魅力の一つは、やはりその繊細な表情であろう。
昭和初期のモダンな建物であるので、ガラス窓がふんだんに使われている。
古民家と比べたらはるかに多くの光が差し込むのであるが、今の感覚で言うと影の部分も多い。
明るさを求めれば、それに比例して影の部分ができてしまうのだ。
現在の建物は、その影の部分を無くすように作られている気がする。
日中の自然光もそうであるし、夜間の照明でも影を作らない様式である。
それは生活には便利かもしれないが、建物から「表情」をなくしてしまったと思う。
日中は曇っていなければ照明が要らないし、夜でも家中のっぺりと明るい今の家。
それに比べたら屋敷の光[……]

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2016.09.04

矢中の杜へようこそ 四季の美しさ

”矢中の杜”の魅力は何ですかと聞かれても、簡単には答えられない。
何を魅力的と思うかは、人それぞれ違うからであるし。
あえて言うなら、その選択肢がたくさんあることが魅力かも。
例えば季節の風景をとってみても、情緒があると思う。
季節感のある風景が一つの屋敷で見られるということは、ボランティアが管理する個人邸宅では稀有なことではないだろうか。
本来それは当たり前と言ってしまえる風景であるが、その当たり前の風景は今の家には無いように思える。
日本の家の四季って、こんなだったと改めて感じる。
改めて屋敷を訪れると、日本には四季があることを感じられる気がするのであるが。
この風景を出来[……]

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2016.08.21

矢中の杜へようこそ(その13)

全国十二国立公園図

屋敷の別館一階にある食堂には、昭和16年当時の12の国立公園の絵が張り巡らされている。
食堂の入り口の上から順に、北から南へと名所を描いて並べてあるのだ。
自分のブログで過去に使ったネタであるが、結構興味を持たれる方も多いのでこちらでも取り上げてみる。
ガイドの時にも個々の説明まではできないので、簡単な説明を付してみた。
当然現在でも有名な場所ばかりであるので、詳しく知りたい方はネットで検索されることをお勧めする。

大雪山層雲峡銀河瀧
まず最初は『大雪山国立公園』で、層雲峡の銀河の瀧である。
対をなす流星の瀧は男滝と呼ばれ、こちらは女滝と呼ばれている[……]

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