2016.11.07

矢中の杜へようこそ こんなこだわりが

旧矢中邸は傾斜地の中腹に建てられているため、玄関までには石段を登る構造になっている。
石段は幅の広い大谷石が使われていて、なかなか豪華である。
そして表玄関への石段は、途中で少し曲がるようになっているのがお分かりだろう。
側桁は大谷石の上に御影石が載せられているのだが、その折れ曲がった部分の石が「く」の字に曲がっているのにお気付きであろうか。
普通に考えれば二つの石を斜めに交差させるのであろうが、あえて一つの石で作られている。
切れ目のない折れ曲りは目立たないのであるが、その存在がこの石段を柔らかく見せている気がする。
当然反対側もそうであるが、こちらは下の大谷石の継ぎ目が見えるの[……]

「全文表示」

2016.10.23

「矢中の杜へようこそ」 食堂の鳥たち

多くの方々が楽しみにされている「龍次郎さんのこと」の回であるが、投稿者のマシントラブルのため今回は急遽お休みとなる。
繰り上げてこの連載となるが、どうぞご理解願いたい。

今は「野沢如洋展」を行っているが,やはり屋敷を飾るのは南部春邦の画であろう。
特に別館の食堂の板戸絵は、ほとんどの方が驚かれる華やかさの「草木図」であるが、華やかな草木に混じり小鳥が五羽描かれているのである。
玄関ホールの丹頂図をはじめ、書斎の板襖には秋の七草の中に鶉が描かれている。
群鳥図の額装も残っているし、南部春邦は鳥のモチーフが好きであったのだろうか。

soraneko[……]

「全文表示」

2016.10.17

「矢中の杜へようこそ」それでは足元を見てみようか

屋敷には今では信じられないような、豪華な素材がふんだんに使われている。
まず表玄関を入ると、玄関ホールの床は見事な欅の一枚板が敷かれている。
漆仕上げだというそれは、七十余年を経ているというのにまだ輝きを残す。
細かいところを見ればさすがにズレとかも見えるが、未だに見事と言っていいのでは。
続く長い廊下もそれと比べれば地味に見えるが、欅の一枚板の漆仕上げである。
さすがにこちらは日常に使われていたので、漆はだいぶ薄くなってはいるが・・・。
敷地の地形などにもよるのだろうが、南北に延びた廊下の西側に水回りが並んでいる。
この長い廊下と木枠のガラス窓は、なんとも昭和の雰囲気を色濃く残[……]

「全文表示」

2016.10.03

「矢中の杜へようこそ」照明器具の多様さ

矢中の杜(旧矢中邸)には、当時のものと思われる照明器具が多く残っている。
それらの多くはオーダーメイドの特注品なのではないかと思われる。
繊細な磨りガラスと、竹や木・洋銀や真鍮を組み合わせた工芸品の様なものである。
案内しないとあまり気づかれないのだが、なかなか素敵な意匠である。
だがいかんせん薄いガラスを使った繊細なものは、すでに限界かも知れない。
ひとつまたひとつと、次々に保存に回さざるをえないのは仕方がないことだろう。

次回の公開日は、10月8日です。
筑波山麓秋祭りに伴うイベントも、いよいよ始まります。
こちらをご覧ください。

soraneko[……]

「全文表示」

2016.09.18

矢中の杜へようこそ 光と影の美しさ

矢中の杜の魅力の一つは、やはりその繊細な表情であろう。
昭和初期のモダンな建物であるので、ガラス窓がふんだんに使われている。
古民家と比べたらはるかに多くの光が差し込むのであるが、今の感覚で言うと影の部分も多い。
明るさを求めれば、それに比例して影の部分ができてしまうのだ。
現在の建物は、その影の部分を無くすように作られている気がする。
日中の自然光もそうであるし、夜間の照明でも影を作らない様式である。
それは生活には便利かもしれないが、建物から「表情」をなくしてしまったと思う。
日中は曇っていなければ照明が要らないし、夜でも家中のっぺりと明るい今の家。
それに比べたら屋敷の光[……]

「全文表示」

2016.09.04

矢中の杜へようこそ 四季の美しさ

”矢中の杜”の魅力は何ですかと聞かれても、簡単には答えられない。
何を魅力的と思うかは、人それぞれ違うからであるし。
あえて言うなら、その選択肢がたくさんあることが魅力かも。
例えば季節の風景をとってみても、情緒があると思う。
季節感のある風景が一つの屋敷で見られるということは、ボランティアが管理する個人邸宅では稀有なことではないだろうか。
本来それは当たり前と言ってしまえる風景であるが、その当たり前の風景は今の家には無いように思える。
日本の家の四季って、こんなだったと改めて感じる。
改めて屋敷を訪れると、日本には四季があることを感じられる気がするのであるが。
この風景を出来[……]

「全文表示」

2016.08.21

矢中の杜へようこそ(その13)

全国十二国立公園図

屋敷の別館一階にある食堂には、昭和16年当時の12の国立公園の絵が張り巡らされている。
食堂の入り口の上から順に、北から南へと名所を描いて並べてあるのだ。
自分のブログで過去に使ったネタであるが、結構興味を持たれる方も多いのでこちらでも取り上げてみる。
ガイドの時にも個々の説明まではできないので、簡単な説明を付してみた。
当然現在でも有名な場所ばかりであるので、詳しく知りたい方はネットで検索されることをお勧めする。

大雪山層雲峡銀河瀧
まず最初は『大雪山国立公園』で、層雲峡の銀河の瀧である。
対をなす流星の瀧は男滝と呼ばれ、こちらは女滝と呼ばれている[……]

「全文表示」

2016.08.07

矢中の杜へようこそ(その12)

旧矢中邸の一番奥の部屋と言えば、今は別館二階の床の間となる。
杉の正目材を使った二階部分でも、やはりこの部屋は杉の存在感がある。
実は以前はこの奥に、奥庭の池に下りられるような次の間があったのだそうだ。
厠や水場もあったと伝わるその建家は、無住となって以降不審者の侵入経路となった為前の持ち主が取り壊したと聞く。

付書院もある床は一間半で、障子の向こうの板の間も含めて見事である。
そしてあまり気付かれないのであるが、この部屋の襖絵がなかなか見事なのだ。
ちょっと見たところでは金色の雲を配したように見えるが、よく見ると淡く木立が描かれていて、その奥には木立のシルエットが見えるのであ[……]

「全文表示」

2016.07.28

矢中の杜へようこそ(その11)

階段を上れば、別館の二階へと至る。
ここは戦後に造られた比較的新しい建家であるが、それでも昭和28年の竣工であるから60余年は経ている事になる。
戦後の建造物のせいか他の部分、特に別館一階部分とは随分と雰囲気が違う。
一階部分は鉄筋コンクリート製で、漆仕上げの木材に漆喰天井であった。
対して二階は、杉の正目材の白木で造られている。
やはりどこか穏やかな雰囲気なのは、戦後の開放感なのであろうか。
一階部分とは12年もの年代差があるものの、今となってはそのレトロさにあまり違いを感じないかも知れないが。
戦後と言えどもちょうどこの頃は、朝鮮動乱の最中であったはず。
現に出来上がったば[……]

「全文表示」

2016.07.21

矢中の杜へようこそ(その10)

さて次に紹介するのは、階段である。
たかが階段と侮るなかれ。
総欅造りの漆仕上げの階段など、民家ではそうそう見られるものではない。
踏み板が分厚い欅の一枚板なのは当然で、手すりや腰板も全て漆仕上げの欅なのである。
緩い勾配なので途中の踊り場で折り返す構造であるが、折り返した階段の底板までもが見事な木目の欅なのだ。

そして踊り場で向きを変えれば、左右には模様ガラスの入った窓が対になっていて、そこから射込む光はまるで別世界へと誘うかのようである。
食堂のような派手さはないのであるが、一度この階段を上ってみればその凄さを理解出来ると思う。
固い欅の板なのに足の当りがとても柔らかく、[……]

「全文表示」