こんにちは。井上です。
前回まで、邸宅が登録文化財に登録されるまでの過程をじっくり振り返りました。
多少は文化財に興味を持っていただけたでしょうか?
さて、今回からは、それと同時並行で進めていた、組織作りの方へ、話題を変えたいと思います。
いよいよNPO法人設立の話に入っていこうと思っていたのですが、その前に、任意団体時代に実施した最初で最後のイベントについて、書くことにします。
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“4人会”から始まった矢中の杜。
2009年の年明けから少しずつ邸宅の掃除を進め、4月から調査も開始して、活動にもエンジンがかかり始めました。
そして、活動の一つの目標として「邸宅公開をする」ことが挙がっていきます。
綺麗になった邸宅を見てもらいたい、というのはもちろんですが、数十年も空き家になっていた“謎”の空間がどういうところなのか、そして最近そこに出入りしている我々は一体何者なのか、そういう面を地域の方に知ってもらう機会を作りたいということになったのです。
(近所の方々からすると、数十年も空き家だったところに、急に地域住民でない人間が出入りし始めた、という状況なので、さぞ不信感を持たれていたのでないかと思います。)
その絶好の機会が、北条地区で7月に行われる夏の一大行事「祇園祭」だろうということで、2009年7月の祇園祭にて、甦った邸宅を初公開することが決まりました。
公開の仕方は、定員、時間を区切ってのガイドツアー制。
初公開とはいっても、まだまだ手の行き届いていない箇所もありますし、我々主催者側もきちんとした組織になっているわけではないので、あくまで試験的な公開という面は否めません。
それでも、一般の方に見ていただく以上は少しでも邸宅のことを知ってもらえるようにと、説明パネルを作ったり、受付の方法を考えたり、ガイドの仕方を考えたり、メンバーで頭を悩ませながら臨みました。



大々的な告知をしたわけでなかったので、見学者のメインは関係者や地元の方々、学生でした。
皆さんに素晴らしい建物だ!と喜んでいただいたのをよく覚えています。
中には、地元の年配の方で「ずっと矢中御殿の中を見てみたかった。でももう自分が死ぬまで叶わないと思っていたのに、今回見学出来て本当に嬉しい。冥土の土産になった(笑)」なんていう方も。




ガイドツアーの最後には、見学者の方々にアンケートに回答いただき、感想なども聞きました。
初めて外部の方々の声を聞くことができて、自分たちの活動が地域の方々にも受け入れられるのか、認めてもらえるかどうか、それを実感できたことは、その後の活動の大きな励みとなりました。
間違いなく、その後の邸宅公開の体制の原点となったイベントと言えます。
ちなみに…
お祭りだし、邸宅公開以外にも楽しんでもらおう!とオーナーの職場の方々が敷地内でボランティアで屋台や流しそうめん大会も開催してくれました。
流しそうめんは、矢中の杜の庭園の整備を進めていく中で伐採した竹を利用したもの。
やっぱりそういう“お楽しみ”は必要ですよね~!




この祇園祭での邸宅公開については、先の連載「矢中の杜活動史」の中で、メンバーの寺尾さんも書いてくれていました。
彼の視点からすると、私は随分と無茶ぶりをしていたようです(笑)
合わせて読んでみてくださいね。