2022.11.10

“矢中の杜”をはじめた守り人の話 18 古くて新しい、ロゴマーク

こんにちは、井上です。

当NPO法人にはロゴマークがあること、ご存知でしょうか。

矢中の杜のFacebookページでは、プロフィール画像になっていますが、

最近は以前より表立って使用することが少なくなっているので、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。

これが、設立当初に作ったロゴマークです。

中央の四角い枠に「矢中の杜」の文字、その周囲に本館、別館、庭園を配しています。

このロゴマークの最大のポイントは、木版画にしたことでした。

ロゴマークを作るにあたって、矢中の杜のどういう部分を表現したいか?

なかなかの難問です。

 

 

矢中の杜の持つ、

“古いけど、それだけじゃない。どこかスタイリッシュでモダンで新しいところ“

“本物のもつ力強さ、質感”

“私たちNPOメンバーが持つエネルギー溢れる感じ”

こういう部分を表現したい。

 

 

そんな話をしている中で、創設メンバーの一人でもあるデザイナーHさんがアドバイスとして発したのが「木版画」にしてみるということでした。

木版画というと、誰しもが経験したであろう小学校の図工の時間を思い浮かべて懐かしく感じるかと思います。

でも、多くの人はその後彫刻刀を握って版を彫るというのはなかなかしないもので、そんな時にふと木版画を見ると、かえって新鮮だったり、格好良く思えたりするのでは。

それに、木版画というのは版を彫る作業、インクを載せて刷る作業、すべての工程が必ず人の手で為されるもので、彫った人のエネルギーが作品に込められる手仕事そのもの。

そういう意味では、ロゴマークにおいて矢中の杜を表現するのに木版画という技法はピッタリかもしれない。

 

 

ロゴマークを木版画で作るなんて、全く浮かんでいなかった私にはなかなかの衝撃で、しかし言われてみれば、なるほど、その通り!とも思えてきて、ワクワクが止まらなかったです。

 

 

木版画と決まれば、早速は原画(版の構図)の製作に取り掛かります。

これは主に私が考えました。

手を動かして何かを作るのは元々大好きなので、この頃は学業そっちのけで、研究室でひたすら原画のことを考えていました。

周りから見たら、この人一体何しているんだろう、という光景だったことでしょう。

 

 

「矢中の杜」の四文字を収めた正方形がまずベースにあって、そこに邸宅の絵を描くというのは割と早くに決めたような気がします(ここらへんは記憶が曖昧です)。

ただ、版画の原画を考える上で難しいのは、どこを白くして(彫って)、どこを黒く残すか(彫らない)という点です。

同じ絵でも、それによって印象がガラリと変わるので、いろいろなパターンを考えました。

下の写真は、矢中の杜の四文字を、白抜きにするか黒抜きにするか、格子の線を入れるかなどを試し刷りして比較ものです。印象が全然違いますね。

原画について検討している時のメモです

 

また、版画の場合は、正確に細かく描くというよりも、ある程度のざっくり感があった方が味が出るので、邸宅や庭の絵を表すのにどこまで正確さを求めるか、線を盛り込み過ぎていないか、なども検討事項でした。

下の写真は、試しに彫った暫定版。正式なロゴマークと見比べると、よりざっくりとした印象です。

 

 

めでたく原画が完成すると、いよいよ版を彫る作業です。

実はこの作業、創設メンバー全員が少なくとも一太刀入れているんです。

躊躇なくザッザッと彫っていく人もいれば、いやいや私はちょっと…と言いながら恐る恐る線一本だけ彫る人。

各々の個性が出て、その様子を見ているのも大変楽しいものでした。

特に印象に残っているのはデザイナーHさんが彫った空。

この部分は原画でもとくに書き込んでいなかったところで、Hさんの好きなように彫ってくださいと丸投げしたような記憶があるのですが、すごく雰囲気のある空に仕上げていただきました。

全員のエネルギーが注がれて、ついに版が完成!

 

 

しかし木版画はこれで終わらず、、、最後に残るのは刷る作業。

版は同じでも、インクの載せ方でこれまた仕上がりが全く違ってくるので、何枚か刷って線の出方やインクの擦れ具合を見比べて、一番良いものを選びました。

それが、冒頭に載せたロゴマークというわけです。

 

 

最近はこの木版画のロゴ自体を使用する機会は少なくなっていますが、中央の正方形に収まった矢中の杜の四文字の部分は、オリジナルグッズや広報媒体でもすっかり定着していますね。

ロゴマークを見かけた際は、そんなエピソードがあったのか~と思って見てもらえると嬉しいです。

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