Author Archives: soraneko

2016.08.07

矢中の杜へようこそ(その12)

旧矢中邸の一番奥の部屋と言えば、今は別館二階の床の間となる。
杉の正目材を使った二階部分でも、やはりこの部屋は杉の存在感がある。
実は以前はこの奥に、奥庭の池に下りられるような次の間があったのだそうだ。
厠や水場もあったと伝わるその建家は、無住となって以降不審者の侵入経路となった為前の持ち主が取り壊したと聞く。

付書院もある床は一間半で、障子の向こうの板の間も含めて見事である。
そしてあまり気付かれないのであるが、この部屋の襖絵がなかなか見事なのだ。
ちょっと見たところでは金色の雲を配したように見えるが、よく見ると淡く木立が描かれていて、その奥には木立のシルエットが見えるのであ[……]

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2016.07.28

矢中の杜へようこそ(その11)

階段を上れば、別館の二階へと至る。
ここは戦後に造られた比較的新しい建家であるが、それでも昭和28年の竣工であるから60余年は経ている事になる。
戦後の建造物のせいか他の部分、特に別館一階部分とは随分と雰囲気が違う。
一階部分は鉄筋コンクリート製で、漆仕上げの木材に漆喰天井であった。
対して二階は、杉の正目材の白木で造られている。
やはりどこか穏やかな雰囲気なのは、戦後の開放感なのであろうか。
一階部分とは12年もの年代差があるものの、今となってはそのレトロさにあまり違いを感じないかも知れないが。
戦後と言えどもちょうどこの頃は、朝鮮動乱の最中であったはず。
現に出来上がったば[……]

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2016.07.21

矢中の杜へようこそ(その10)

さて次に紹介するのは、階段である。
たかが階段と侮るなかれ。
総欅造りの漆仕上げの階段など、民家ではそうそう見られるものではない。
踏み板が分厚い欅の一枚板なのは当然で、手すりや腰板も全て漆仕上げの欅なのである。
緩い勾配なので途中の踊り場で折り返す構造であるが、折り返した階段の底板までもが見事な木目の欅なのだ。

そして踊り場で向きを変えれば、左右には模様ガラスの入った窓が対になっていて、そこから射込む光はまるで別世界へと誘うかのようである。
食堂のような派手さはないのであるが、一度この階段を上ってみればその凄さを理解出来ると思う。
固い欅の板なのに足の当りがとても柔らかく、[……]

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2016.07.14

矢中の杜へようこそ(その9)

さてそれでは、いよいよ屋敷で一番華やかな部屋へ行く事にしよう。
食堂と呼ばれているこの部屋こそが、『矢中御殿』の大もとなのである。
皇室の方々がお休みになってもいいほどの豪華で堅牢な建物なのであるが、何故かどうしても還暦を過ぎた龍次郎翁の豪華な『秘密基地』に見えてしまう。
屋敷の中でここだけが異質に見えるのは、そんな龍次郎翁の遊び心からか。
信じられないような、桜の一枚板の天板を使った造り付けの棚に、観音開きの窓に西陣織と伝え聞くカーテン。
7枚にもおよぶ南部春邦の筆による草木図は全て杉の一枚板に描かれ、その鮮やかさは70余年経った今でも健在である。
そしてその上に張り巡らされた国[……]

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2016.07.07

矢中の杜へようこそ(その8)

さてそれでは、別館に向かうとしよう。
廊下の先がいきなり土間になって、別館の玄関になる構造はちょっと不思議だ。
実は屋敷の中でこの別館の一階部分が、最初に建てられたものなのである。
この部分のみが屋敷の中で、唯一鉄筋コンクリート製なのであるのが意味深か。
当時すでに統制物資てあったコンクリートをふんだんに使い、無骨なまでに強固に造られた建造物である。
表面に大谷石のプレートを配しているので、見た目はさほど無骨ではないが。
ここは皇族方がお休みになってもいいように造られた建物であるから、安全性を求めた堅固な造りになっているのではないかと想像出来る。
見た目の華麗さと防御的な構造とが[……]

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2016.07.01

矢中の杜へようこそ(その7)

”矢中の杜”こと『旧矢中邸』は、古民家ではなく近代和風建築と言う範疇になるそうである。
門外漢なので詳しい事は全く判らず、的外れな事を書くかも知れないがそこはご容赦を。
保存されている古い家の多くは、明治以前の古民家がほとんどであろう。
あるいは大富豪や爵位を持つ方々の、かなり本格的な洋館となどであろう。
だがここは財を成したとは言え、あくまでも一般庶民の建てた別宅なのである。
贅沢な材料や造りであっても、やはりどこか共感出来る空間だと思える。
多くの方が懐かしいと感じられる台所を過ぎ、廊下に沿って風呂と厠が続く。
その様子は、またFBのおまけの画像でご覧頂きたい。

手ぬぐ[……]

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2016.06.24

矢中の杜へようこそ(その6)

”矢中の杜”の邸宅は昭和の建築なので、古民家とはちょっと様相が違う。
動線としての縁側や廊下を持っているので、基本的には他の部屋を通らずに各部屋に行けるようになっている。
そしてその廊下や縁側、表玄関のホールなどが印象的であろう。
いわゆる古民家とは違った、どこかモダンな感じが見られると思うのであるが。

縁側を通って居住のための部屋に行く造りは、サザエさんの家などにも見られる昭和初期の構造であろう。
ただし失礼ながらその造りや素材に関しては、『磯野家』とは比べようも無い。
普段使いの建物ながら床に使われた欅の一枚板を始め、考えられないような贅沢な素材がふんだんに使われており、床[……]

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2016.06.19

矢中の杜 手ぬぐい展 2016

今年も”矢中の杜”で、手ぬぐい展の開催が始まりました。
初日の昨日は梅雨の最中とは思えないほどの上天気で、30℃を遥かに越える真夏日に。
通行人どころか車の行き来さえ少ない感じで、ちょっとこれは人出が無いかと心配になるほどでした。
それでも開場時間前からお出でになる方もいて、有り難い事です。


邸宅の中一面に手拭いなどを飾り付けてあるので、いつもとは違った華やかな雰囲気です。
イベントの性格上いつものようなガイドは出来ませんが、その分自由に見て回る事が出来ます。
お出でになった皆さんは手拭いやグッズに感心されながらも、邸宅の華麗さも楽しんで行かれたようです。
また別館にはか[……]

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2016.06.16

矢中の杜へようこそ(その5)

玄関ホールに上がると、右手に居住スペースが並ぶような構造になっている。
杉の一枚板を使った板襖には、直接日本画が描かれているのに驚くであろう。
作者は南部春邦と言う絵師で、矢中龍次郎氏とはかなり懇意な方だったようだ。
丹頂鶴の絵の向こうは畳廊下のような四畳間で、奥の襖には猿が描かれている。
左手は居間で普段の生活が営まれていた場所となり、突き当たりは書斎である。
書斎の北側は掘り炬燵のある床の間で、広縁の向こうに石積みの中庭を望む。
その様子はまた、Facebookに掲載した、おまけの動画でご覧頂ければと思う。

ところで週末の18日から『手ぬぐい展』が始まるのでちょっと様相が[……]

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2016.06.09

矢中の杜へようこそ(その4)

石段を上って邸宅の玄関を入り、いよいよ『旧矢中邸』の内部を見る事になる。
この表玄関の重厚さは、まず目にして驚くものであろう。
土間に敷き詰められた布目タイルは、どうやら泰山タイルらしい。
天井は格天井となっており、砂壁の見事さに目を奪われるだろう。
そして欅の一枚板の式台を始め、玄関ホールの素材や造りの豪華さは必見だ。
それでもこれは、屋敷の華麗さのごく一部にしか過ぎないのであるのだが。

今回もFasebookの方に、おまけの短い動画を添付してある。
興味のある方は、どうぞご覧頂きたい。

今年の手ぬぐい展は、18日からの開催となります。[……]

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